ASMLは過大評価されている?EUV露光装置の独占的地位と地政学リスクを紐解く

ASMLは堅調に成長を続けるはず…と思いたいけど、すでに過大評価されているのではないか、という見方もあります。結論から言えば、ASMLには引き続き成長の余地があると考えられるものの、いくつかのリスク要因や懸念点も存在してるんです。

ASMLが今後も伸びると考えられる理由

1.EUV露光装置の独占的地位

なんといってもコレでしょう。ASMLは、最先端の半導体製造に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置を事実上独占しています。現在の微細化技術においては、EUV露光装置が不可欠であり、これなしに高性能な半導体を製造することはできないわけです。

競合他社(ニコン、キヤノン)はEUV開発から撤退しており、ASMLのこの分野での優位性は揺るぎないものとなっています。半導体の微細化競争が続く限り、ASMLへの需要は高水準で推移するでしょう。

2.半導体市場の長期的な成長

半導体は、AI、IoT、5G、自動車の電動化・自動運転など、現代社会のあらゆる分野で需要が拡大しています。

半導体製造装置市場全体も2024年以降、力強い回復と成長が予測されており、長期的に見ても成長トレンドが続くと考えられます。ASMLはこの成長の恩恵を最も大きく受ける企業の一つです。

3.高い参入障壁と技術的優位性

EUV露光装置の開発には、途方もない研究開発費と高度な技術力が求められます。ASMLは長年の研究と多額の投資によってこの技術を確立しており、新規参入は極めて困難です。

この「堀の深さ」が、ASMLの競争優位性を支えています。

4.顧客との強固な関係

TSMC、Samsung、Intelといった世界の主要な半導体メーカーは、ASMLの主要顧客であり、彼らの投資計画はASMLの業績に直結します。ASMLはこれらの顧客と密接に連携し、次世代技術の開発を進めています。

ですが、良いことばかりではありません。

過大評価されている可能性があると考える理由(リスク要因・懸念点)

1.半導体サイクルによる業績変動

半導体

半導体業界には、景気循環(シリコンサイクル)があり、ASMLの業績もその影響を受けます。最近の決算では、受注額が市場予想を下回ったり、2025年の売上ガイダンスを下方修正したりする動きも見られました。

これは、PCやスマートフォンの需要低迷、あるいはAI以外のロジックチップや一部メモリの需要回復の遅れが影響している可能性があります。

2.地政学リスク(特に中国向け輸出規制)

米国による中国への半導体輸出規制は、ASMLの業績に大きな影響を与えています。中国はASMLにとって重要な市場の一つであり、輸出規制の強化はASMLの売上成長を抑制する要因となります。

2025年には中国市場からの売上が大幅に減少する見込みとの報道もあり、この地政学リスクは今後も注視が必要です。

3.リソグラフィ技術のピーク懸念と次世代技術への投資

一部では、現在のリソグラフィ技術(EUV)の微細化が限界に近づいており、その先の技術(High-NAEUVなど)への投資や開発が成功するかどうかが、長期的な成長の鍵となります。

もし新たなブレークスルーがなければ、成長が鈍化する可能性もゼロではありません。ASMLは常に研究開発に多額の投資を行っていますが、その成果が常に保証されるわけではありません。

4.高いバリュエーション

ASMLは、その独占的地位と将来性から、高いバリュエーション(株価収益率PERなど)で取引される傾向にあります。

半導体市場全体の成長が鈍化したり、期待される収益成長が実現しなかったりした場合、現在の高評価が修正される可能性はあります。

まとめ

ASMLは、EUV露光装置という他に類を見ない圧倒的な競争優位性を持っています。

半導体市場の長期的な成長トレンドに乗る限り、引き続き成長が期待できる企業なのは間違いない。

しかし、「過大評価されている」と感じるのも理解できます。これは、主に半導体サイクルの影響による短期的な業績の変動、地政学リスク、そして現在の高い株価が織り込んでいる成長期待の高さによるものです。

投資判断としては、以下の点を考慮すると良いでしょう。

長期的な視点半導体業界全体の成長とASMLの技術的優位性を信じるなら、短期的な変動は乗り越えられると考えられます。

半導体サイクルの理解業界の好不況のサイクルを意識し、押し目買いのチャンスを待つことも重要です。
地政学リスクの動向米中間の技術覇権争いとそれによる輸出規制の動向は、ASMLの業績を左右する重要な要因となります。

決算発表とガイダンスASMLの四半期決算発表や今後の見通しを注意深く確認し、受注状況や中国市場への見通しを把握することが不可欠です。

ASMLは「半導体業界の王冠に輝く宝石」とも評される企業であり、その技術力と市場での地位は非常に強固です。

しかし、半導体業界特有の変動要因や地政学的なリスクも存在するため、投資にあたっては慎重な分析が必須ですね。