エヌビディア(NVIDIA)の株価が最高値を更新している背景には、主に以下の要因が挙げられます。
1.AI(人工知能)市場の爆発的な成長!
エヌビディアは、AIの深層学習に不可欠なGPU(画像処理半導体)の設計・開発において圧倒的なシェアを誇っています。
ChatGPTのような生成AIの登場により、GPUの需要が急増し、エヌビディアはその「AIの黄金の波」に乗っていると評価されています。
同社のGPUは、膨大なデータを高速処理する特性から、ゲームだけでなく、データセンター、自動運転、ロボティクスといった幅広い分野で活用されており、今後も需要拡大が期待されています。特に、データセンターにおけるAI関連支出の拡大は、今後数兆ドル規模の市場に成長すると予測されており、エヌビディアはその恩恵を最も受ける企業の一つと見られています。
2.ずばぬけた業績と成長の見通し
エヌビディアは、アナリスト予想を上回る好決算を何度も発表しており、売上高や利益が大幅に伸びています。直近の決算でも、前年同期比で売上高が数倍になるなど、目覚ましい成長を遂げています。
ファブレス(工場を持たない)メーカーであるため、設備投資の負担が軽く、市場の変化に迅速に対応できる強みも持っています。製造の多くを台湾積体電路製造(TSMC)などに委託しており、TSMCの好調な業績もエヌビディアへの需要の強さを反映していると見られています。
3.革新的な技術と将来性への期待
エヌビディアは、GPUだけでなく、AIソフトウェアプラットフォームのCUDAなど、AIエコシステム全体を構築しています。これにより、競合他社が追いつくのを困難にし、業界リーダーとしての地位を確立しています。
CEOのジェンスン・フアン氏も、AIとロボティクスを最大の成長機会と位置づけており、継続的な技術革新と市場拡大への期待が高まっています。
ソブリンAI(自国でAIを開発・運用する概念)の推進も、今後の成長ドライバーとして注目されています。
これらの要因が複合的に作用し、エヌビディアの株価は持続的に最高値を更新する状況となっています。
地政学的なリスクはない?
現在(2025年6月時点)のエヌビディアには、複数の地政学的なリスクが存在します。主に以下の点が挙げられます。
1.米中間の技術覇権争いと輸出規制
米国の輸出規制:米国政府は、中国のAI開発能力を制限するため、エヌビディアの高性能AIチップ(H100,H200,B200など)の対中輸出に厳しい規制を課しています。これにより、エヌビディアは中国市場での売上が大幅に減少する、あるいは見込み利益を計上せざるを得ないといった影響を受けています。
実際、H200チップに関連する在庫評価損として45億ドルを計上したり、中国向けに8億ドルの売上損失を見込んだりしています。
中国の自国開発促進:米国の規制は、皮肉にも中国国内のAIチップ開発を加速させており、ファーウェイ(Huawei)などの中国企業が競争力を高めています。これは、長期的にエヌビディアの中国市場での地位を脅かす可能性があります。
迂回輸出の懸念:中国企業がマレーシアのデータセンターなどを利用して米国の輸出規制を回避しようとしているとの疑惑も報じられており、これが事実であれば、さらなる規制強化やサプライチェーンの混乱を招く可能性があります。シンガポールでは、エヌビディアのチップの迂回輸出に関わったとされる人物が逮捕される事件も発生しています。
2.台湾情勢の不安定性
エヌビディアは、最先端のチップ製造を台湾積体電路製造(TSMC)に大きく依存しています。中国と台湾間の地政学的緊張が高まり、台湾有事のような事態が発生した場合、TSMCの生産が停止するリスクがあり、これはエヌビディアのサプライチェーンに壊滅的な影響を与える可能性があります。一部報道では、台湾の主要チップメーカーが中国による侵攻の際に技術を保護するため、「キルスイッチ」を発動する可能性についても言及されています。
3.グローバルなサプライチェーンの脆弱性
エヌビディアは、部品調達や製造を複数の国のサプライヤーに依存しています。特定の地域での政治的・軍事的緊張、貿易紛争、または予期せぬ出来事が発生した場合、サプライチェーンが寸断され、製品の供給に遅延やコスト増加が生じるリスクがあります。
これらの地政学的なリスクは、エヌビディアの株価や業績に大きな影響を与える可能性があり、投資家はこれらの動向を無視できません。
エヌビディアは、規制に準拠した代替チップの開発や、中国市場での戦略的適応など、これらの課題に対応しようとしていますが、その道のりは依然として不確実性がある、と思っておいた方がいいでしょうね。