イランによるホルムズ海峡封鎖は、世界の株式市場に非常に大きな影響を与える可能性があります。主な影響は以下の通り。
1.原油価格の急騰と景気後退懸念
ホルムズ海峡は世界の石油供給の約20%が通過する重要な海上輸送路です。ここが封鎖されれば、原油供給が大幅に滞り、原油価格は高騰します。
報道によると、1バレルあたり100ドル、あるいは140ドルを超える可能性も指摘されています。
景気後退懸念
原油価格の急騰は、企業の生産コスト増や家計の負担増につながり、世界経済全体のインフレ圧力が高まります。
これにより、消費活動の萎縮や経済成長率の低下が懸念され、景気後退のリスクが高まります。特に、日本のような資源輸入国は、エネルギー安全保障上の重大な脅威に直面します。
2.株式市場の全体的な下落
リスクオフの動き:地政学的な緊張の高まりと景気後退懸念から、投資家はリスク資産である株式から資金を引き上げ、より安全な資産(金、米国債、一部の仮想通貨など)に逃避する傾向が強まります。
これにより、世界的に株価が下落する可能性が高いです。
業種による影響の差
エネルギー関連株の上昇:原油価格の高騰は、石油・ガス関連企業の収益を押し上げるため、INPEXなどのエネルギー関連株は上昇する可能性があります。
防衛関連株の上昇:地政学リスクの高まりから、防衛関連株にも買いが入る可能性があります。
その他産業への悪影響:製造業、運輸業など、エネルギーコストの変動に敏感な業種は、収益悪化が懸念されます。
3.為替市場への影響
リスク回避の円高ドル安:有事の際には、安全資産とされる円が買われ、円高ドル安が進む可能性があります。これは、輸出企業にとってはマイナス要因となります。
4.過去の事例と今回の特徴
イランは過去にもホルムズ海峡封鎖を警告したことがありますが、完全封鎖に至ったことはありません。しかし、今回は米国によるイラン核施設への攻撃など、情勢がより緊迫している点が異なります。
実際に封鎖が実施されない限りは、原油価格の上値は限定的との見方もありますが、報道によって一時的な市場の動揺は発生しています。例えば、報道を受けてビットコインが急落した事例が見られます。
5.日本経済への影響
日本は原油の多くを中東に依存しているため、ホルムズ海峡封鎖は深刻な影響を及ぼします。
原油価格の高騰によるガソリン・灯油価格の上昇、電力・ガス料金の値上げ、運輸・物流コストの増加、インフレ圧力の高まりが予想されます。
日本には約250日分の石油備蓄があるとされていますが、封鎖が長期化すれば経済全体に深刻な影響が及び、GDPが大きく押し下げられる可能性も指摘されています。
総じて、イランによるホルムズ海峡封鎖は、世界の原油供給に甚大な影響を与え、原油価格の急騰を通じて、世界経済の減速、株式市場の広範な下落を引き起こす可能性が高い、極めて深刻なリスク要因と言えます。
投資家は、今後の情勢の進展に細心の注意を払い、リスク管理を徹底すべきですね。
イランにとっても痛手のはず。ハッタリなのでは?
1.イラン経済への壊滅的な打撃
ホルムズ海峡は、イランの原油輸出の生命線です。米国による制裁下でも、イランはホルムズ海峡を通じて中国などに原油を輸出しており、これがイラン経済の重要な柱となっています。
封鎖すれば、この収入源が完全に途絶え、イラン経済は壊滅的な打撃を受けます。
輸出収入の依存度
対外経済政策研究院によると、原油輸出はイランの全輸出額の80%以上を占め、国内総生産(GDP)の20~30%を担っています。これを自ら断ち切ることは、経済的に自殺行為に等しいと見なされます。
外貨準備の枯渇
戦争はとにかく多大な費用がかかります。
ホルムズ海峡を封鎖して国際社会と対立すれば、さらなる制裁や軍事行動により、イランの外貨準備は急速に枯渇するはず。
2.国際社会からの孤立と反発
エネルギー安全保障への脅威:ホルムズ海峡の封鎖は、世界のエネルギー安全保障に対する明白な攻撃と見なされます。これは、イランに友好的な国々(特にイラン産原油の主要な買い手である中国など)でさえ、イランから離反する可能性があります。
軍事介入の可能性:国際社会、特に米国は、ホルムズ海峡の安定を死活的に重要視しています。封鎖に踏み切れば、国際的な軍事介入を招く可能性が極めて高く、イランは多大な軍事的損失を被るでしょう。
3.過去の事例と「瀬戸際戦術」
過去の警告と撤回:イランは過去にも何度かホルムズ海峡封鎖を警告していますが、実際に完全封鎖に至ったことはありません。これは、封鎖が自国にとっても大きなリスクであることを認識しているためと見られます。
牽制としての効果
しかし、ホルムズ海峡封鎖に言及すること自体が、イランにとって最も効果的な牽制手段となっているのも事実です。世界の原油価格に影響を与え、国際社会に圧力をかけることができます。
4.現在の状況での真剣度
核施設攻撃への報復:今回は、米国によるイラン核施設への攻撃という、前例のない事態を受けてのホルムズ海峡封鎖の承認報道です。イラン国内の強硬派からの報復圧力は非常に強いと考えられます。
国家安全保障最高評議会の最終判断
現時点ではイラン国会が「承認」したと報じられていますが、最終的な判断は最高安全保障委員会に委ねられています。これは、実際に実行に移すには、より広範な検討と決定が必要であることを示唆しています。
結論として、イランにとってホルムズ海峡の完全封鎖は、経済的にも外交的にも軍事的にも極めて大きな代償を伴う「諸刃の剣」です。そのため、実際に完全封鎖に踏み切る可能性は低いと考える専門家が多いです。
しかし、現在の情勢は極めて緊迫しており、偶発的な衝突や計算違いがエスカレーションにつながるリスクも無視できません。イランが「瀬戸際戦術」をどのレベルまでエスカレートさせるのか、国際社会がどのような対応を取るのか、予断を許さない状況が続いています。
中国への影響と中国の立場は?
中国は、イラン産原油の最大の輸入国であり、ホルムズ海峡を経由するエネルギー供給に大きく依存しています。イランがホルムズ海峡を封鎖すれば、中国は以下のような甚大な影響を受けます。
エネルギー供給の混乱と価格高騰
中国の経済成長は安定的なエネルギー供給に支えられています。ホルムズ海峡の封鎖は、中国への原油供給を著しく阻害し、国際原油価格を急騰させます。これは、すでに減速傾向にある中国経済にさらなる打撃を与えかねません。
物流コストの増加: ホルムズ海峡を通れない場合、アフリカ沿岸を経由する遠回りの航路を取る必要があり、輸送日数と運賃が大幅に増加します。これは、中国の製造業や輸出入ビジネスにとって大きな負担となります。
外交的信頼の失墜
中国は中東地域において、安定と協調を重視する外交政策を展開しています。イランが一方的にホルムズ海峡を封鎖することは、中国が築いてきた中東での外交的影響力や信頼を損なうことにつながります。
実際に、中国外務省はイランによるホルムズ海峡封鎖の可能性について、「衝突の緩和を推進し、地域情勢の不安定によって世界の経済がさらに大きな影響を受けることを防ぐ努力を強めることを、国際社会に向けて呼びかける」と述べ、懸念を表明しています。これは、イランに対して行動の自制を促すメッセージと受け取れます。
イランのジレンマ
イランは、米国による厳しい制裁下で、中国を重要な経済的パートナーとしています。中国からの原油購入は、イランにとって貴重な外貨収入源であり、経済を維持するための生命線です。この関係を自ら断ち切るような行動は、イラン自身の経済的破滅を招きかねません。
イランがホルムズ海峡の封鎖を口にするのは、米国や国際社会への最大限の圧力戦術であり、「これ以上追い詰めれば、こちらも最終手段に出る」というメッセージと解釈するのが一般的です。
しかし、それが実際に実行されれば、中国だけでなく、インドなど他の主要な石油輸入国との関係も決定的に悪化し、イランは国際社会でさらに孤立することになります。
したがって、イランが「ハッタリ」であるという見方は、まさに中国との経済関係や国際社会からの孤立という側面からも裏付けられているんです。